料理講習会で吐血!?パイワン族女性の運命は如何に… - 雑貨店Noichi(ノイチ)の運営 | 有限会社溝上企画

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料理講習会で吐血!?パイワン族女性の運命は如何に…

1967年生まれ、福岡県出身。趣味は滞在型海外旅行、カラオケ、酒宴参加、そっくりマグネット、消しゴム収集、台湾原住民と戯れること。性格は明るく元気で騒がしい(とよく言われる)。

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「小百合、今度原住民だけの料理朝ご飯講習会があるけど、参加するか?」ある日、台湾の義理の父ソノックチャバイさんからお声がかかる。

台湾の失業率は日本に劣らず、ましてや台湾国内で弱者である原住民に至っては死活問題となっている。そんな職のない、やる気のある屏東県(台湾南部)の原住民の為に、朝食の店を開業できる様に訓練を受ける講習会が催されるというのだ。主催は行政院原住民委員会と屏東県政府。義理パパソノックさんが行政院の委員を務めている関係で、唯一原住民でない私の講習会への参加が可能となった。

台湾の朝食は、日本のそれとは趣が随分違う。一言でいうと朝から油満点、鍋貼(グオティエ、焼餃子)饅頭(マントウ)、油条(ヨウティアオ、長細い揚げパン)、豆漿(トウジャン、豆乳)、蛋餅(ダンピン、台湾風クレープ?)、最近ではサンドイッチやハンバーガーもポピュラーである。おかゆ、大根餅、その種類の豊富さには圧倒される。私は蛋餅が大好物、留学時代はこのような高カロリーなものを連日食べ続け、一時期日本から持参した洋服が着れなくなって焦った経験の持ち主だ。
多くの原住民の村にはこのような朝食を提供する店がないので、失業問題と原住民村落の不便を一気に解消すべく、今回の講習会開催の運びとなったのだ。

しかし朝食店の労働条件は厳しい。朝3時には仕度に取りかからないと5時開店に間に合わない。私が大の早起き苦手ということを知っているソノックさんは、「小百合が店を開いたら早点(中国語で朝食のこと)が晩点になってしまうなあ」と冗談を言って笑っている。しかし冗談にならない、なぜなら私の普段の就寝時間は夜中の3時なのだから。期間は3日間、朝8時から午後5時までみっちり。
「みなさんは朝から晩まで一日中朝食を作るので、昼も朝食を食べ、夜も自宅に持ち帰って朝食を食べることになります」とソノックさんが主催者挨拶で冗談めかして笑いを誘う。しかし冗談ではなかった。3日3晩自分たちの作った油ギトギトの朝食を食べ続けたのである。

屏東県自慢?の国立大学屏東科学技術大学構内の調理室が我々の実習場所である。毎朝屏東市からバイクで約30分。講習にはソノックさんの奥様ベンナーさん、娘のバイスも揃っての参加である。用意された真っ白のエプロンと帽子を身に着ける。パイワン民族は屏東の日差しが強いせいか色黒で、私一人青っちろくて明らかに異色である。ばれるのも時間の問題である。

原住民はひとくくりには出来ないが(実際ソノック一家は時間に几帳面です、むしろ私のほうがルーズなくらい…)、時間に適当な人が多いというのが私の印象。この講習初日の遅刻者は半数以上、ソノックさんは朝から厳しい説教を始める。バイスからお父さんは厳格!と聞いていたが、ナルホド、と納得。私も以前、台湾のカラオケボックスに絶対に女一人で行ってはいけない!と車の中で延々説教を食らったことを思い出した。応募が多かったため講習会に参加できなかった方も多くいるとソノックさんの説教によって知り、私なんかが参加して良かったのか?と少々肩身が狭い。

実習は時間の制約があるので超スピードで進んで行く。まず家政科の生徒さんによる手本を見て、6人一グループに分かれた班ごとに午前中だけでも3品以上作る。初日は台湾ハンバーガー(刈包、グーパオ)、肉まん(鮮肉包子、シエンロウパオズ)、コーヒー牛乳、有機饅頭の4品。ひたすら小麦粉との格闘である。朝からこれほど体力を使う仕事をするとさぞダイエットになるであろう。それではここで肉まんのレシピをご紹介。

【材料】

1. 中筋粉(強力粉)400g、酵母10g、水220g
2. 中種麺団(こねた小麦粉です、多分…)600g、砂糖50g、粉ミルク10g、ラード10g、低筋粉(薄力粉)100g、泡打粉(ドライイースト)7g。 (餡) 豚ひき肉150g、キャベツ200g、生姜小さじ1

【作り方】

1. まずA.の材料をコネコネ混ぜ合わせてボール状にし(講習では機械を使いました、けっこう重労働)、蓋(ラップでも可)をしたうえで暖かい場所に置き、二倍の大きさに膨れるまで発酵させる。約20~30分。指で押して戻らないのが目安。
2. 1. にB.を加え、一つ50グラムの大きさに分ける。手でつやが出るまで丸くこね、指で平たく伸ばし餡の材料を包む(キャベツ、生姜は小さく切って、ひき肉と混ぜ合わせおく、塩を少々ふっておくとよい)。蒸篭の上にマントウを乗せ、そこで二次発酵を待ち(講習ではこの頃合はよく理解できませんでした…)、強火で12分蒸す。台湾の小麦粉は低、中、高筋という種類に分かれているが、低筋粉はおそらく薄力粉、中筋粉は強力粉に分類してよい、だろう…中種麺団はこねた小麦粉らしいのですが、なんて訳せばよいのでしょう、ご存知の方いらっしゃいましたら、メッセージボードにご投稿ください。ははは。

こんな普段お目にかからない料理単語を並べ立てられての講習会は中国語初級クラスの私にとってかなりしんどいものだった。必要以上に早く喋ってないかい?と疑りたくなる中国語を聞きとっている私に、「今先生は何を作っているんだろうねえ」と暢気な質問をしてくるパイワン族のおばちゃんがいるかと思えば、いきなり台所のシンクに鮮血を吐く女性が!おおーっ!身体の具合でも悪いのか?!と思いきや足元にはしっかりとビンロウセットが置かれているではないか。こんな場所にもビンロウを欠かさない、さすがパイワン族である。注意してみていると、各班のシンクで吐血シーンが見られる。本人は内緒で隠れて食べているつもりでも、丸見えである。

ビンロウとは棕櫚(シュロ)科の常緑高木で、椰子の木に似ているがそれより幹が細く、植樹後5年を経てようやく実が成る。実は長細い円形、味は渋みの中にかすかな甘味がある、らしいが、初心者の印象は様々なようだ。実を割って中に練った石灰を入れ、胡椒類の葉で包み、カミカミする。この一つがかけても吐血シーンは演出することができない。以前私は石灰なしのビンロウをカミカミしたことがあるが、その実の細かい繊維が口に残って、気持ち悪かったことを記憶する以外何の感慨もなかった。石灰をいれなかったので赤い汁を吐くことはできなかった。

原住民と打ち解けるにはこのビンロウが必要不可欠だと聞いたが、私はこれまでの原住民と交流してきた約10年間ひたすらビンロウ交流を敬遠してきたので、一概には言えないだろう。
ビンロウはパイワン族の結納品としても使われる由緒正しい嗜好品である。なので彼等に言わせれば、料理講習会でビンロウをカミカミすることは無作法でも何でもなく、生活上当然のことなのである。しかし見た目は決して見目麗しいとは言えないことを知ってか、かがんでこっそり食べているソノックさんの義理の娘の姿はいささか滑稽であった(写真参照)。

そんな吐血シーンを目の当たりにして、そう言えば正式にHP上でパイワン族の重要な嗜好品ビンロウを紹介しようと思い立ち、ベンナーさんにビンロウの葉の巻き方を実演していただいた。
さっきのビンロウ解説にも登場した胡椒類の葉を用意し、それを4分の一まで折り、その葉で、実を歯で割って中心の柔らかい部分を取り除き、そこに練り石灰を入れておいたビンロウを包む、包み方は写真の通り。

このような驚きと発見の中で講習会3日間は無事に終了したのであった。

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